2017-04

スポンサーサイト - --.--.-- --

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「ラテンアメリカ十大小説」 木村榮一 著  岩波新書 - 2012.08.11 Sat

著者の木村榮一氏は
ボルヘス、
ガルシア=マルケス、
バルガス=リョサなど、
ラテンアメリカの
小説の翻訳の第一人者として知られる方。

作品案内として

ホルへ・ルイス・ボルヘス『エル・アレフ』
アレホ・カルペンティエル『失われた足跡』
ミゲル・アンヘル・アストゥリアス『大統領閣下』
フリオ・コルタサル『石蹴り』
ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』
カルロス・フェンテス『我らが大地』
マリオ・バルガス=リョサ『緑の家』
ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』
マヌエル・プイグ『蜘蛛女のキス』
イサベル・アジェンデ『精霊たちの家』

上記のラテンアメリカ小説以外の
ヨーロッパの文学を含めた
その「小説の歴史」を教えてもらえる部分もあり楽しいです。

序 物語と想像力で著者の木村榮一氏が述べている。

著者の木村榮一氏はプロ野球のファンで
プロ野球のニュースも見るが
スポーツ紙も読むという。
なぜか「言葉」で書かれたものを
読みたいという思いがあるとのこと。
テレビの中継と新聞の記事との最大の違いは
何かと考える。

新聞記事の場合は言語化されている点で、
そこに記者の想像力と読者の想像力が
それぞれに働くということである。
記者の言葉はもちろん事実にもとづくにせよ、
つきつめればその人の主観であり、
言葉にされたとたんに読み手の側に判断がゆだねられる。
あらゆる出来事は言語化された瞬間にそれは物語、
すなわちフィクションに変わる。

物語の力はどこから生まれてきたのか。
物語への欲求はおそらく人間が言葉を
使うようになった時から生まれた。
人は強い印象を受けたり、
深い感動を覚えた出来事を体験すると
それを言葉として語りたくなるが、
それが物語の原型のひとつに
なっていると考えられる。

もうひとつの原型は、神話的な物語。
民話、伝説
新聞の記事、
通俗的なゴシップ、
身近な噂話、
エピソードなど
それらも視野に入れれば
わたしたちは物語に
浸って生きている。

ラテンアメリカの文学、
20世紀以降に書かれた小説の最大の特色は
その現実とフィクションとの関係性にある。
著者が20年近く前にスペインに滞在している時に
向こうで活躍している日本人の画家の方と
歓談したときのエピソードが述べられている。

著者の木村榮一氏が
絵画というのは色彩と形象を用いて創造を行う。
翻訳というのはテキストがあって、
それを日本語に移し替えるだけの作業で
翻訳の仕事は大好きだが時々
ふとさみしいような気持ちになると。

画家の方は答えた。
何もないところから絵を描いているわけではなく
自然や風景、町、人々の営みなどをじっと見つめ、
それをもとに絵を描いている。
近頃自分の描く絵は抽象性が強くなっているが
その根には自分が見た現実があって
それを自分なりに写し取っているだけと。

ある時、著者の木村榮一氏は
幻想文学について考えている時に、
スペインで会った画家の言葉を思い出した。

幻想文学もまた、
抽象画と同じで
あくまで現実に基づきながら、
そこから一見「現実ばなれ」した
描写を生み出しているのではないかと。

ラテンアメリカの歴史についての記述もある。
新大陸は15世紀末にコロンブスによって発見され
その後約三世紀間スペインの植民地として統治される。
植民地時代はセルバンテスの『ドン・キホーテ』を
所有しているだけで異端審問にかけられるほど
厳しい検閲制度が敷かれていたとのこと。

思想書や小説といった散文の輸入は
厳しく制限されていた。
新旧両大陸の間には大西洋という障壁もあり、
地理的に隔絶していたので
当時のラテンアメリカの人たちは中世末期の心性を
残したまま閉ざされた世界に生きていた。

ラテンアメリカの文学の歴史においては
1910年代にはいるとヨーロッパの前衛主義運動の影響を
受けた若い世代の詩人たちが登場する。
けれども、ラテンアメリカの文学が世界に衝撃を
与えたのは小説の分野であった。

アルゼンチンのボルヘス
キューバのアレホ・カルペンティエル
グアテマラのミゲル・アンヘル・アストゥリアス
この三人が先駆者となり60年代から80年代にかけて
重要な作品が生まれてきて
ラテンアメリカ文学ブームと呼ばれるようになる。

先駆的な三人の作家の共通点は
若い頃ヨーロッパに滞在し
そこで前衛主義運動の刺激を受けていること。
その運動のおかげで
彼らは旧大陸の文化的、芸術的伝統の重圧に
押し潰されることがなかった。

ラテンアメリカ文学の作品が世界文学に大きな衝撃を
与えたことは知られているが
なぜこのような現象が起こったのか。

ウラジミル・ウェイドレの
『芸術の運命―アイリスタイオスの蜜蜂たち』が引用されている。

偉大な詩人がその天才の花を
咲かせるのに最も適した条件は
かれの使用する文学語がまだ幼年期にあるような時代に
生きるという幸運にめぐまれることだという。

シェイクスピアやフランスのプレイヤッド派の
詩人たちの場合にせよ、
詩の創造は、
いつもある程度言語的創造と時期を
同じくしているのである。
このような時期において
詩人がもちいるすべての言葉は
それが意味する事物に
このときはじめて冠せられたかのような
新鮮さにみちている。

この一節をもとにラテンアメリカ文学を考えると
植民地時代を通じて中世末期のまま
凍結されていた言語が
独立以後に解凍しはじめる。
「すべての言葉は
それが意味する事物に
このときはじめて冠せられたかのような
新鮮さにみちている。」時期にあったと考えられる。

それともう一点、
忘れてはならないことがあると
著者の木村榮一氏は述べる。

20世紀というのは小説のジャンルにおいて
さまざまな実験の行われた時期でもある。
バーナード・バーゴンジーという批評家が
『現代小説の世界』の中で、
プルーストとジョイスを
「19世紀小説の墓掘り人」と呼んだ
イタリアの作家モラヴィアの言葉を引いて
小説という石切り場は最後に残された
岩層まで掘り尽くされ、
1930年代以降の小説はもはや小説でなくなったと述べている。
しかしラテンアメリカ文学を見渡した時、
その予測が的外れであったことに気がつく。
ボルヘス、カルペンティエル、アストゥリアスが
登場してきたのがまさしく1930年代以降だからである。

ヨーロッパの20世紀文学というのは
ヌーヴォー・ロマンに象徴されるように
実験的な小説の時代でもあった。
言語がみずみずしい生命力にあふれている時代に
生まれ合わせた20世紀の
ラテンアメリカの作家たちの場合は、
その言語を伸びやかに駆使しながら
失われていた物語を小説の中によみがえらせた。

ラテンアメリカ小説の豊かな物語性を
支えている特殊な「現実」感覚は
ある種の「若さ」だけでなく
同時に「古さ」にもその特徴があるとのこと。

ガルシア=マルケスは幼い頃事情があり
祖父母の手で育てられる。
祖母がケルト人の多いことで知られる
スペイン北部のガリシア地方出身で
ケルト人の血を引いていた。
祖母が幼い彼に信じがたい民話、
恐ろしい話、伝説を語って聞かせる。

ガルシア=マルケスが非現実的な出来事を
今見て来たばかりだというように表情ひとつ変えずに
しゃべっていた祖母の語り口を生かして完成させたのが
『百年の孤独』であるとのこと。
この作品の背後にはケルト人が語り伝えてきた
民話、伝説の語り口が息づいていると。

のちにガルシア=マルケスは幻想的な性格を備えた
自分の作品について語っている。

(祖母にとっては神話や伝説、
民間の信仰といったものが)
ごく自然な形で日常生活の一部になっていた。
祖母のことを考えていてふと、
作り話をしていたのではなくて、
単に
予兆や癒し、
予感、
迷信
に満ちた世界を素直に
受け入れていただけなのだ。
そしてそういう世界が
われわれにとってなじみぶかい、
きわめてラテンアメリカ的なものだ
ということに思い当たったんだ。・・・・・・・(R・クレマデス、A・エステバーン『ミューズが訪れる時』)


十大小説それぞれの作品の案内は
作者の幼少期のエピソードからはじまり、
作品の内容に迫るよりも
『エル・アレフ』の作品の章では
ボルヘス・ワールドを繰り広げるような。
著者はボルヘスはたとえてみれば、
途方もない記憶力という船に乗って
時間の海を航海し、
そこに浮かぶ書物という
驚異に満ちた島々を発見して
ぼく達に紹介してくれているのです、とあります。


ラテンアメリカの作品の
翻訳者としてわかりえる事
翻訳者だからわかりえてしまう事を描き
語ってもらえる物語のような
『ラテンアメリカ十大小説』でした。





スポンサーサイト

大好きな本が読めなくなるほど心が疲れた時に - 2012.02.10 Fri

心が疲れた時に読むと読み終わったころには
少しだけでも元気が出たなぁと思える本を紹介します。

『マイ仏教』 みうらじゅん著
本の帯に、人生は苦。諸行無常の世の中だけど・・・、
そこがいいんじゃない!
とあります。

あえて「それで」ではなく「そこが」と言うところが、
今、私悩んでつらいけどそれって得しちゃってる?もしかしてハッピー
なのかもと思えてくるから不思議です。

内容もみうらじゅん流に仏像大好き少年だった頃や
音楽にはまった荒行と呼ぶ青春時代などのおもわずクスッと
笑ってしまうエピソードがあり癒されます。




NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

プロフィール

みどりのほし

Author:みどりのほし
女性 

本があると幸せ

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (5)
哲学 (9)
おしゃれ (1)
新書 (2)
音楽 (2)
芸術 (11)
文芸 (11)
日記 (22)
本にまつわる日記 (20)
文芸+長編詩 (1)
映画 (1)
文芸+芸術 (1)
生田耕作 (1)
アンドレ・ブルトン (1)
田中慎弥 (1)
堀江敏行 (1)
ジョルジョ・アガンペン (1)
和辻哲郎 (1)
マルクス・アウレーリウス (1)
宮沢賢治  (1)
マクニール (1)
ジャン・ボードリヤール (1)
三田完 (1)
小川洋子 (1)
江國香織 (1)
松本清張 (1)
パウルベッカー (1)
田中 純 (1)
マルセル・ブリヨン (1)
リディアディヴィス (2)
岡倉天心 (1)
川端康成 (3)
ロバート・L.ハイルブローナー (1)
安部公房  (1)
チャールズ・シミック  (1)
アドルフ・ロース (1)
シュー・ヤマモト (1)
イタロ・カルヴィーノ (1)
難波里奈 (1)
ギュスターヴ・フローベール (1)
エイミー・ベンダー (1)
尾崎翠 (1)
ブローティガン (1)
村上春樹 (1)
チャペック (1)
サガン (1)
ジョイス (1)
芸術+哲学 (1)
三島由紀夫 (1)
コルタサル (1)
円地文子 (1)
建築 (1)
加藤周一 (1)
ドストエフスキー (1)
丸谷才一 (1)
鈴木大拙 (1)
クッツェー (0)
哲学+文芸 (1)
リディア・デイヴィス (0)
堀江敏幸 (0)

ご訪問ありがとうございます

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSリンクの表示

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。