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再び、「見えない都市」 イタロ・カルヴィーノ著 河出文庫  - 2012.05.15 Tue

マルコ・ポーロという名の人物がフビライ汗となり代わったあなたに語ってくれる一夜一話。
砂漠に現れる蜃気楼のように魅惑的で手にすることが出来ない都市が
眠りについたあなたの夢の中に現れるかもしれません。

詩情を湛えた文章で空想の都市を語ることにより
実在する都市のなかに潜む深淵が浮き彫りになってきます。
「都市と欲望 4」で語られる都市では、
マルコが語る灰色の石の都フェドーラの中心には、
部屋ごとにガラスの球をそなえた金属の宮殿があり
その球をのぞきこむと理想の都市の雛型が見えるのです。
いずれもそれは、この都市が何かの理由で今日見られるとおりのものに
ならなかったならば、そうなっていたであろうと思われる姿が。
住民はそこを訪れ自分の望むところにふさわしい都市を選んで
眺めながら自分の姿を想像する。

運河の水をひきこむはずになっていた(その水を干してしまいさえしなかったら)
水母の養殖池をのぞきこんでいるところや、
軒飾りの上から象専用にあてられた(今では象は街から追い出されておりますが)
大通りを見渡しているところ、
擬宝珠屋根の寺院の塔の(これはもう土台すら跡形もなくなっておりますのに)
螺旋階段をすべりおりているところなど。

フビライ汗にそう語った後、マルコは

「ああ、偉大なるフビライ汗さま、陛下の帝国の地図のなかには、
灰色の石の大いなる都フェドーラも、またガラス球のなかの無数の小フェドーラも、
ともどもにその場所を得ておらねばなりません。
いずれも等しく現実であるというのではございません、
いずれも等しく単なる虚構にすぎないからでございます。
一方は必然として受け容れられておりながらその実はまだ必然とは
なっていないものをその内部に閉じこめており、
他方は可能なもののように想像されながらその1分後にはもはや
可能ではなくなっているものを包含いたしておるのでございます。」

著者カルヴィーノが捜し求めている世界の隠された意図が見えてきます。

ある日フビライはマルコに訊ねます。
自分に語って聞かせているのと同じ話をマルコが西方に帰って
その国民にもくり返し語るのかと。
マルコは答えます。
私はいつでもただ話をするだけでございます。
しかし私の話に耳傾けるものは、自分の待ち望んでいる言葉のみを
受け止めるのであり、語る場所や時代により、また耳を傾ける者
ひとりひとりによって別のものになりうると。
物語を支配するものは声ではなく、耳であると。

同じように物語を支配するものは文字ではなく目であるとも思えるので、
わたしがこの書物を読み旅にでかけてたどりついた場所は
今このときの自分にしかたどりつけない場所であり
明日のわたしはけっして同じ場所にはたどりつけない事になりそうです。
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