2017-03

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『山の音』 川端康成 著  新潮文庫 - 2012.11.13 Tue



この作品は一章それぞれに
独立した短編の形で発表された作品を
全体の構成の部分としてとらえ
長編小説として完成させたものである。

どうしてその作者の書いた文章に惹かれるのか。
この作品のなかには能面、
渡辺崋山の墨絵「風雨暁鳥図」
宗達の子犬の水墨、
利休忌、
鎌倉を舞台にした四季の草花、情景
この小説は夏の時季からはじまり
日まわり、秋の月、公孫樹、萩、薄、栗、寒桜、
黒百合、鳶の鳴き声。
それぞれの章で四季を感じる日本の心象風景を描き出す。

加藤周一は『日本文学史序説』で
「川端の小説のなかの女は、
―男も同じことだから、むしろ登場人物は、というべきかもしれない―
すべて影が薄く、
人間としての重みがなく、
ただ感覚的な一場面を作るための要素として描かれている。」
「女の物化、があり、他方には、物の官能化がある。
女は焼物の如く、焼物は女の如くである。
いや、焼物に限らない。冬の夜の天の河でさえも
川端にとっては、なにか艶めかしいのである。」と述べている。

川端康成の作品を読み進め、
ページをめくる手を止めて
しばしその言葉を鑑賞してしまうのは
物を官能的に描いている、その部分であったりする。
そこに描かれる人間の感情は、
女性が語る美しい言葉使いもあいまって
詩を読むように乾いていて、
イメージとして残る。


先月、観た映画「白夜」の監督をしたロベール・ブレッソンも
人間の感情を抑制して描き、ストーリーを進める上で
物を撮るように映したという事を思い出した。

川端は1899年生まれ。ブレッソンは1901年生まれ。
同じ頃に生まれた二人。




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「千羽鶴」 川端康成 著  新潮文庫 - 2012.08.08 Wed

フローベールは「ボヴァリー夫人」という小説が
黄色を漂わせているように書けばそれで良かったと
いうような事を読んだ事がある。

この「千羽鶴」は紫。
主人公の菊治は
志野茶碗の手触りで肌を思い
志野茶碗の紅ばらが枯れしぼんだような色で唇を思う。
茶室の前に咲く夾竹桃の花はぼうっと白い。
三百年伝えてきた瓢箪に一朝でしぼむ朝顔を活ける。
倒れかかった女の重みは感じず温かい匂いのように近づく。

美に誘惑されるような作品






「美しさと哀しみと」 川端康成 著  中公文庫 - 2012.04.02 Mon

作家の大木年雄、日本画家上野音子、その若い女弟子坂見けい子の
京都を主な舞台にした長篇小説。
女性の美しさと哀しみの綾を堪能できます。
時に激しい感情とともに官能的に。
日本画家の加山又造氏の挿画があります。


明治32年生まれの川端氏が
昭和36年1月から38年10月にかけて
雑誌に連載していた作品です。

作家の大木は31歳の時妻子がありながら
16歳の女学生の音子と結ばれます。
音子は大木と別れその心の傷から
精神を病んでしまいます。
そして、母と一緒に心の傷を癒すために
京都へ移り住みます。

年月は流れ24年後、自宅の北鎌倉から
大木は京都へ除夜の鐘を聞きに
暮れの29日に東海道線、特別急行列車「はと」の
展望車に乗っている。その場面から物語は
はじまっています。


けい子はかたい顏で海を見ていた。
「濃い濃霧になって来ますわ、近くの島や半島もかすんで…。」
「かなしいの?」
「波の色もいやだわ。」


美少女の女弟子けい子が大木を誘惑してホテルでの会話。
「かなしいの?」と男性がこたえる。
女性の美しさが際立ちます。
川端氏はもし自分が女性なら、この様な会話を
したいと思い、この場面を描いたのでは。
川端氏の中に女性的な部分があることで、
女性の美しさを描けるのだろうと思います。

東海道の沿線には、山もあり、海もあり、湖もあり、
時間によって雲も感傷に色染まるのに、あまり目立たない茶畑などが
なぜ音子の心に訴えたのかわからないけれども、茶畑の沈鬱のみどり、
夕暮れの茶畑のうねの沈鬱の陰が、音子にしみたのかもしれなかった。
それに茶畑は自然でなく、人工的に小さくて、うねの陰は深くて濃い。
また茶の木の円い群れは、おとなしい羊の青い群れと見えたが、
東京を立つ前から哀しい音子は、静岡あたりまで来てその哀しみが
極まったのかもしれなかった。



音子が大木年雄との愛にやぶれて、
母とともに京都へ逃避することになって汽車の窓から見た
静岡あたりの茶畑を見て哀しむ場面です。
日本の山河あっての哀しみの表現があります。
茶畑を見て哀しみの感情が
東京からの時間の経過とともに極まる。
女性の哀しみに共感していて美しくて…

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