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「装飾と犯罪―建築・文化論集」  アドルフ・ロース著 - 2012.04.28 Sat

ロースは1870年にチェコに生まれウィーン、パリを中心に活動した建築家。
ハプスブルク朝のウィーンにおいてアヴァンギャルドとされた近代建築思考、
レトリックの巧みな文化批判の24篇の文章を収録


表紙をめくるとまず最初にアドルフ・ロース氏の写真が掲載されています。
ひげをたくわえてスーツをおしゃれに着こなすダンディぶりです。
男の身だしなみを論じたエッセイ「紳士のモード」を述べている方ならではです。
このようなお姿の方が書かれた文章と思いながら読んでいくことにより
思考や批判の意味するところがより深く理解できます。

ロースは日常、街中を歩き回り、建築現場を含め路上で
おきる出来事、人の行動、マナー、服装など
あらゆることを熱心に観察していた人だということです。
そして自身の建築思考に、建築作品に結実させていたのです。

室内空間についての記述では
自分が子どもの頃からの愛用の机に妹が幼い頃つけたインクのしみに思いをはせ
両親が結婚祝いにもらった写真の額、祖母が使った流行おくれのソファ、
妹のイルマが幼稚園で作った紙の時計を貼って壁にかけた
毛糸で編んだスリッパのことに触れ、
住居の中にある家具、家具に限らずどんなものでも
ひとつの歴史を、家族の歴史を物語っているのであり、
それは住まい手の様式、家族の様式であると。

半ば強制されるようにこの時代に流行していたのは
古いドイツ様式の家具、調度品に埋もれる暮らし。
ロースはその流行していた空間に合わないという理由で
家族の神聖な愛用品を捨てるなんてことはせずに
たとえ我々の趣味が悪いとしてもそれでいい、
我々の住居を悪趣味につくろうと論じます。
部屋とは楽器のヴァイオリンのようなもので、
それを自分の分身のごとく弾きこなすこともできるというが
住居も同じように住みこなすことができると。
文学作品のような香りを醸し出す文章で綴っていきます。

別の章でオットー・ワーグナーの才能に触れ
ワーグナーは建築家としての衣を脱ぎ去り、
ガラスの浴槽をデザインする時はガラス吹き職人、
ガラス研磨職人の身になって考えられ
真鍮のベッドをデザインする時は真鍮作りの身になって
考え感じられることを個有な資質と述べていて、
ロース自身もその様な資質、ロマンチストな部分を
持っていることが感じられます。
ワーグナーの常に忘れない部分は芸術家気質であるという様に。

ウイーンで当時行われていた旧万国博の室内空間を
詳細にそのスタイル、調度品をレポートしている章もあり
この記述はそのスタイルを真似してしまえるくらい詳しいので興味深いです。
当時の装飾豊かに飾られる志向のなか、
簡素さを志向するといった傾向が始まったとあり
その展示会場での一番人気は簡素な室内空間であったそうです。
その設計者がワーグナーでした。
寝室は腰壁が緑色の木のパネル、黄色の真鍮製のナイトテーブル
長椅子に敷いた白熊の毛皮、床の絨毯の赤い桜の花、
色彩効果は素晴らしいと述べています。
床の絨毯には疑問があると述べ
絨毯に描かれた桜の木の根につまずく錯覚を覚えるからと。

収録されている文章は新聞紙上に書いた記事、雑誌、機関紙などへの
文章でとても解りやすいです。
ロース自身の編集による小冊子
「他のもの。西欧文化をオーストリアに移入するための小冊子」
という個人誌の記事もあります。
この小冊子はペーター・アルテンベルクが編集していた
半月刊雑誌「芸術」の附録として発行、発売されましたが二号でおわったそうです。
オーストリアは西欧の国であるのに何故
西欧文化をオーストリアに移入する必要があるのかという点は
当時先進国の都市化が進んだ他の西欧の国々(イギリス、アメリカも含め)
と比較し、ロースの眼には周縁に位置するオーストリアは
文化の面で後進国と映ったからであるらしいです。

この当時のウィーンってこんな感じだったのね。と
心を踊らせるのも良いですし
建築論として知識を得るのにも良いです。
ベートーヴェンについてやシェーンベルク、ココシュカとの厚い友情
を語る文章を読みロース氏の人物像を探ることもできます。

ロース氏が設計した住宅外観、住宅内部の写真や
バーやカフェの写真も掲載されています。
表題になっている「装飾と犯罪」はフランスの雑誌に初めに
掲載され、ドイツの新聞に載りその後これをもとに
ウィーン、ミュンヘン、ベルリンなど各都市において講演されたものです。
ロース氏が、意図する効果が最大限に発揮できるよう緻密に計算された
表題と文章で、「装飾と犯罪」という表題は一度聞くと誰もが
装飾と犯罪と小声で反復したくらい効果的に話題となったらしいです。



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