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「燃えるスカートの少女」 エイミー・ベンダー著 角川文庫 - 2012.05.07 Mon

本を読んでその本の内容よりも、
そこに記されていた言葉の一文が心に残り思い出すことがあります。

この本は半年くらい前に読みました。
短篇集なのですが、不可解で超現実的で、暗く
でも同時に明るいユーモアにみちて、深く真実。

著者エイミー自身がどんな作家を読んできたかですが、
イタロ・カルヴィーノ 奇想天外。
オスカー・ワイルド 童話。
ジェイムズ・ボールウィン 感情の真実を語る。
キャリル・チャーチル 戯曲。
オリヴァ―・サックス 脳神経科医。
ガルシア=マルケス 百年の孤独。
村上春樹 奇妙な宇宙。


「思い出す人」という短篇の内容は、
恋人が逆進化し、ある日まで彼は私の恋人だったのに、
ある日猿になり、一か月がたち、海亀となってしまう。
人間だった彼を見た最後の日、彼は世界をさびしいと思っていた。
私たちは一緒にすわり、さびしくなり、なぜこんなにさびしいんだろうと考え、
ときにはさびしさについて議論した。
その夜、
彼はどういうわけか外で眠るからといい、朝になって中庭を見ると
大きな猿がいて、太陽の眩しさをさえぎろうと大きな毛むくじゃらの
両腕で顏を隠しているのだった。
その両目を見るまでもなく、私にはそれが彼だとわかった。
一緒に芝生に腰をおろして、所在なく草をむしった。
私はすぐに人間だったときの彼を恋しくはならず、
あの彼がもう帰ってこないことには、まだ気づいていなかった。

私が仕事から帰ってきて、もともとの大きさの彼が
歩いたり悩んだりしている姿を探すたび、
あの人は行ってしまったのだということを思い知らされる。
記憶を点検し、まだ記憶が失われていないことを確認する。
なぜなら彼がいないのであれば、覚えているのは私の仕事だから。
台所にゆくと私はガラス容器をのぞきこみ、いまではサンショウウオか
何かになってしまった彼を見る。
そして水を見下しても彼の姿がどこにも見つからなくなり
小さく顕微鏡のレンズを使わなければ、
そのうち、彼のことをさがせなくなってしまうことに
私は耐えられないと思う。
そして、
私は彼を車の助手席に積み、浜辺へと走る。
水際に着くと私は身をかがめ、サンショウウオになった彼を
小さな波の上にそっと置く。
彼は泳ぎ出す。


解説を堀江敏幸氏が書かれていて、
<さびしいと思っていた世界に抱きしめられること>と題がついています。
この短篇について解説文のなかに書かれていて

「記憶を点検し、まだ記憶が失われていないことを確認する。
なぜなら彼がいないのであれば、覚えているのは私の仕事だから」

不在の対象をいつまでも忘れずにいること。
それが「仕事」だと認識すること。
ここにエイミー・ベンダーという作家が差し出す、
冷たくてあたたかい手の秘密がある。
あなたが消えれば「私」も消える。
そういう愛と絶望の癒着のなかで登場人物たちは暮らしているのだが
彼らのあいだに立って読者に言葉を伝えている者だけは
ここに、こちら側の世界に踏みとどまって
消えたあなたを追いかけるつらさよりも
目の前のあなたを追いかけないつらさに
ひとつしかない身体をあずけようとする。

と解説で語られています。

不在の対象をいつまでも忘れずにいること。
それが「仕事」だと認識すること。

解説の堀江敏幸氏の文章を
思い出すのです。








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