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尾崎翠 (ちくま日本文学 4) - 2012.04.05 Thu

コケという生物の恋愛からおたまじゃくしの片恋まで宇宙に遍在する全ての恋を描いています。
昭和初期に書かれた作品が集められていますが古びることなく
時間の途中経過を抜けて昨日書かれた作品のように思えるほど。

なんて爽やかなんでしょう。

こんな爽やかな風がこころに吹くのなら

恋の苦しみもトライアングルな関係も

怖くないと想えてくるではないか。 

などと自分自身も書評を詩でうたいたく
なってくるほどのリズム感とピュアさで
綴られる「僕」が語る恋のおはなし
タイトル「地下室アントンの一夜」。

ひとは恋をすると詩人になるというが
わたしはこの作品の数々に恋をしたようです。

「こおろぎ嬢」「地下室アントンの一夜」「歩行」
「第七官界彷徨」
「山村氏の鼻」「詩人の靴」「新嫉妬価値」「途上にて」
「アップルパイの午後」
「花束」「初恋」
「無風帯から」「杖と帽子の偏執者」「匂い」「捧ぐる言葉」
詩「神々に捧ぐる詩」
タイトルだけでも恋に落ちそうです。
これらの作品を読むと失恋しても
その想いが消えずにその恋する気持ちが
永遠に続くと想う気持ちにとらわれます。
「地下室アントンの一夜」という作品で、
土田九作こと詩人の「僕」が「天上、地上、地下について」
という詩稿にて
恋する「僕」を地上におけるだけの事象ではなく、
天上、地上、地下という
宇宙とも地下ともつながる
自然の1部であると「僕」をとらえているからでしょうか。

失恋をすると自分の悲しみが世界の大部分を占め
そこに自然、宇宙が付属しているような
ちいさな気持ちになりがちですが、この作品は軽やかなのです。
心に爽やかな風が吹き抜けるのです。

「僕」は小野町子に恋をした。
ただ、僕は、町子のいなくなった部屋で、
いつまでも町子の置いて行った一罎のおたまじゃくしを
眺めていました。小さい動物をいつまでも眺めるのは、
人間が恋をはじめた兆候です。秋のおたまじゃくしは、
罎の壁を通して、黒ごまみたいに縮んでみえたり、
黒い卓子匙(テーブルスプーン)ほどに伸びて見えたりしました。
そして、縮んだおたまじゃくしも、伸びた分も、
一匹残らず片恋をしていました。

と「僕」は語ります。
また、「地上苦ければ地下に愉しき夢を追う」と
僕は心の中ですばらしい地下室、
うんと爽やかな音の扉を持った地下室を求めます。
アントン・チェホフという医者は、どこかの国の黄昏期に
住んでいて、しかし、いつも微笑していたと僕の地下室の扉は、
その医者の表情に似ていてほしいと思います。
そしてロシアの劇作家チェーホフ
に想いをはせ地下室アントンと名づけます。

恋とは、一本の大きい昆虫針で針は
僕をたたみに張っつけてしまい「僕」の部屋は
まるで標本箱だといいます。
僕の室内では、一枚の日よけ風呂敷も、
なお一脈のスピリットを持っている。


恋の気持ちを風呂敷や昆虫針という言葉を使い
美しく語るのです。

解説は矢川澄子さんが「二人の翠をめぐって」
というタイトルで書かれているものが載っていて
こちらも魅力があります。
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