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三島由紀夫のエッセイ   - 2012.08.17 Fri

ちくま文庫の三島由紀夫のエッセイ2には
「おわりの美学」というタイトルの章がある。

そこに手紙のおわりについて書かれたエッセイがあります。
手紙、ことに長い手紙、
それもはるかな土地からの結びには、
多少、船の出帆のときに打ち振られる
白いハンカチのごときものが必要とされるとのこと。

「またお目にかかる日をたのしみに」
これは押しつけがましくない、よい結びの文句とあります。
聡明で清潔な人柄が溢れているとのこと。
少し物足りないくらいのところが、
人生の最上の美味なのだそうです。

「お宅の猫チャンによろしく」
愛猫家むきの結び。
愛猫に向かって、
「ホラ、○○さんがお前によろしくって書いてきたよ」
などと言ってきかせそうな人への手紙には、
うってつけの結びの文句。

三島由紀夫が大好きな結びの文句は
「いずれ春永に」
とのこと。
能狂言などで使われる挨拶でそれも
冬の間だけの挨拶。
ここには、日が永くなる春の季節を待つ心と、
その季節の運行のごとく、
決して無理ではない、
ごく自然な再会への期待とが、
一つになっているそうです。

三島由紀夫は語っています。
手紙は遠くからやってきた一つの小舟です。
何十ぺん読みかえしてもすばらしいという
手紙もないではないが、多くの手紙は、
読んでしまえば、それで文反古になってしまう。
手紙はついにわれわれの所有に属さない。
それはわれわれの感情や理性に、
何かの小さな事件を起こして消えて行く。
いわば、私たちは、
空間の海をとおって流れて来た小舟を
読み終わると間もなく、
時間の海の沖のほうへ、
すなわち忘却へと、
流し去ってやるのです。

灯籠のように、
ちらちらと水に灯を流しながら、
遠ざかって行く。
その灯籠の灯影がちらりとまたたいて
岸にいる私たちに、
忘れがたい思いを残すことがある。
それが手紙の結びの文句です。

「お仕事を詰めて、お体をこわしたりなさいませんように。それだけが心配です。」
「早く会いたいな」
「まあせいぜい身辺にお気をつけなさい」
「いやな人ね!」
「僕は今とてもさびしい。どうしてかな」
「今度お目にかかる日が待ち遠しくて待ち遠しくて、病気になりそうです」

これらは明暗さまざまの、しかしきわめて効果的な、
この灯影のまたたきなのです、とのこと。

このエッセイは昭和41年2月から8月まで雑誌に
連載していたそうです。
劇作家でもあった三島由紀夫は、
一篇の戯曲を書き始めるとき、
まず第一に考えるのは、
幕切れの最後のせりふであって、
それがきまらないうちは書きはじめることが
できなかった、ということだそうです。

「おわりの美学」というタイトルの章には
他にも電話、流行、梅雨、旅行、個性、嫉妬など
さまざまなおわりについて書かれています。








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