2017-04

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『東洋的な見方』  鈴木大拙 著  岩波文庫 - 2012.11.30 Fri

かつて日本庭園にて庭石を
眺めていた時わたしは
何を想って眺めていたのだろうか。

今、眺める機会があれば、
鈴木大拙を思い出し
「日本人の間では自然のままの石を、石に人間の魂を与えて見る。
即ち山から出る石は、その掘り出されるときから、
既に石でなくなって居る。
それが庭に据えられると、それは自分たちの友達となって来る。
ものを言うと返事する。
年を経て苔が生えると、それはもう儼然たる存在で、
その庭には一種の寂が生まれる。」と
『東洋的な見方』で記されていたことを
思い出すのかもしれない。

漢民族は石で万里の長城を築き、
エジプト人はピラミッドを建て、
印度にも石の跡は見られる。
日本では石が削られずにそのままに
立てられ、寝かされ、ころがされ、散らかされた。
石を生きものとして見る、
即ち、石から生きものを作り出す。
石をそのままにして、そのままの形で見て生かしていく。


庭石を見ながらお茶を飲む。
わたしは再び鈴木大拙の
「和敬清寂」ではじまるエッセイを思い出す。

「和をいつも、わと読んでいるように思うが
近頃、この和はやわらぎと読んでよいと考えるのである。
やわらぎは茶席へ集まる人人の
心持の土台となることは勿論であるが
茶室の構造および道具の性格というようなものを
支配する原理でもあると見てよさそうである。
茶室の構造にシンメトリイを好まぬのは、
やわらぎの心から来ているのではなかろうか。
自然の曲線を入れて、全体の上になだらかな気分を出すと
その中にいる人間も自らその気を吸うものである。

茶人が古器物を好む1つの理由は
その伝統性にもよるのであるが、
すべての古器物には或る種のやわらぎがある。
古いというただその事実が、
その物に対し何かしらの親しみを覚えさせる。
人間は過去から出て来るのであるから、
自らその出処に対するあこがれを持つ。
未来に対してもあこがれを持つが、
一種の危惧がある。これが希望である。
過去には危惧はない、通って来たので、
このあこがれに望みはないが親しみはある。
親しみはやわらぎに外ならぬ。

これは利休所持とか、
宗旦伝来だとか、
これは遠州の作だとかなどいって
茶人は伝統に気をもむ。
そのものの美的価値は
第二位にも第三位にもおかれる。
茶人の嗜好は寧ろ美そのものよりも
やわらぎというような
人情的なものに気を引かれることが多いのでは。
その物の美的価値はとにかくとして
それに附帯する人間味の親しさを味わんとするのが
茶人の心理ではあるまいか。親しみはやわらぎである。

やわらぎの触覚は手が直接である。
茶碗の触覚のやわらぎは手で感じる。
茶碗を取り上げ、両手で抱持する。
茶人の茶碗は普通の二倍も三倍も大きい。
どうしても両手で持たなくてはならない。
両方の手で茶碗の肌を感ずる。
茶碗から茶をのむというよりも、
両手で掬い上げて茶をのむといった方がよい。」


日本庭園にて読む文学はやわらぎの仮名文学が良いかしら。
と思ったりする。『源氏物語』や『枕草子』など。

「日本文化史のうちで最も日本的なものの
発揮させられたのは藤原時代であろう。
この時代を特徴づけているのは、やわらぎに他ならない。
やわらぎは実に女性の特徴であり、
女性は仮名文学を発明し
それを駆使して女性文学を創作した。
女文字が出来たので、日本の文化は漢字文化から独立した。

日本の気候は湿気で支配されているというが
気候だけではない日本の自然の景物は
一種の潤いと柔かさをもっている。
このやわらぎが最も日本人的嗜好といわれる
茶席の中にも見えている。」

鈴木大拙が90歳前後で編んだこのエッセイ集。
歴史的に「東洋の」見方であったものを
世界の中で東洋から世界に向けて世界化して、
世界における一つの、そして世界にとって
有意義である独特な可能性として、
「東洋的」な見方というのである。

禅と西洋世界との出会い(ぶつかり合いと触れあい)
からうまれた「大拙なる存在」と
上田閑照氏は解説として記す。










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