2012-04

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「マイ・ロスト・シティー」 スコット・フィッツジェラルド著  村上春樹訳 - 2012.04.30 Mon

昨日、この本を購入して読み始めました。

短篇集なのですが、最初の方のページに
村上春樹の「フィッツジェラルド体験」の章があり、
フィッツジェラルドは村上春樹にとって読み終えて
何ヶ月も何年もたってから突然、まるで後髪を摑むように
読者を引き戻していくタイプの作家であった。
と書いてありました。

最初に読んだのは16の時、
18の時「グレート・ギャツビ―」を読み
その時は理解の範囲を超えていたらしい。
そして19歳から21歳までのあの時代と村上春樹が呼ぶごたごたとした3年間
があって、生活の重みを感じた時「夜はやさし」を読み始め
味わったことがない感動だったそうです。

それ以来、フィッツジェラルドの作品を片端から読み始めたとあります。
ドストエフスキーやバルザックやヘミングウェイは、魅かれるが彼らは
僕のための作家ではなかった。

自分のための作家とは何か、

村上春樹はフィッツジェラルドが僕に与えてくれた
ものがあるとすれば、

人が小説というものに対して(それが書き手としてであれ、読み手としてであれ)
向かわねばならぬ姿勢、と言っていいかもしれない。
そして、小説とは人生そのものであるという認識だ。

と語っています。

自分のための作家、
村上春樹がフィッツジェラルドをそう呼ぶように

村上春樹のことを自分のための作家、

村上春樹の小説とは人生そのものであると認識している
読み手はたくさんいると思います。

フィッツジェラルドの作品も魅力的ですが
この「フィッツジェラルド体験」の文章は
かなりオススメです。
魅了されます。








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言葉 - 2012.04.28 Sat

「人の心を動かすとか、勇気を与えるとか、感動を与えるとか、よくあるフレーズですけど、無理なんです。それは、目的にはできない。目的となったら、そんなの与えられるわけがない。なるとしたら結果的にそうなるだけです。それが目的となっている人は、その目的は絶対達成できない。」

とイチローが発言していたのがnumberの雑誌に載っていたらしい。

イチローの言葉は好きです。

「装飾と犯罪―建築・文化論集」  アドルフ・ロース著 - 2012.04.28 Sat

ロースは1870年にチェコに生まれウィーン、パリを中心に活動した建築家。
ハプスブルク朝のウィーンにおいてアヴァンギャルドとされた近代建築思考、
レトリックの巧みな文化批判の24篇の文章を収録


表紙をめくるとまず最初にアドルフ・ロース氏の写真が掲載されています。
ひげをたくわえてスーツをおしゃれに着こなすダンディぶりです。
男の身だしなみを論じたエッセイ「紳士のモード」を述べている方ならではです。
このようなお姿の方が書かれた文章と思いながら読んでいくことにより
思考や批判の意味するところがより深く理解できます。

ロースは日常、街中を歩き回り、建築現場を含め路上で
おきる出来事、人の行動、マナー、服装など
あらゆることを熱心に観察していた人だということです。
そして自身の建築思考に、建築作品に結実させていたのです。

室内空間についての記述では
自分が子どもの頃からの愛用の机に妹が幼い頃つけたインクのしみに思いをはせ
両親が結婚祝いにもらった写真の額、祖母が使った流行おくれのソファ、
妹のイルマが幼稚園で作った紙の時計を貼って壁にかけた
毛糸で編んだスリッパのことに触れ、
住居の中にある家具、家具に限らずどんなものでも
ひとつの歴史を、家族の歴史を物語っているのであり、
それは住まい手の様式、家族の様式であると。

半ば強制されるようにこの時代に流行していたのは
古いドイツ様式の家具、調度品に埋もれる暮らし。
ロースはその流行していた空間に合わないという理由で
家族の神聖な愛用品を捨てるなんてことはせずに
たとえ我々の趣味が悪いとしてもそれでいい、
我々の住居を悪趣味につくろうと論じます。
部屋とは楽器のヴァイオリンのようなもので、
それを自分の分身のごとく弾きこなすこともできるというが
住居も同じように住みこなすことができると。
文学作品のような香りを醸し出す文章で綴っていきます。

別の章でオットー・ワーグナーの才能に触れ
ワーグナーは建築家としての衣を脱ぎ去り、
ガラスの浴槽をデザインする時はガラス吹き職人、
ガラス研磨職人の身になって考えられ
真鍮のベッドをデザインする時は真鍮作りの身になって
考え感じられることを個有な資質と述べていて、
ロース自身もその様な資質、ロマンチストな部分を
持っていることが感じられます。
ワーグナーの常に忘れない部分は芸術家気質であるという様に。

ウイーンで当時行われていた旧万国博の室内空間を
詳細にそのスタイル、調度品をレポートしている章もあり
この記述はそのスタイルを真似してしまえるくらい詳しいので興味深いです。
当時の装飾豊かに飾られる志向のなか、
簡素さを志向するといった傾向が始まったとあり
その展示会場での一番人気は簡素な室内空間であったそうです。
その設計者がワーグナーでした。
寝室は腰壁が緑色の木のパネル、黄色の真鍮製のナイトテーブル
長椅子に敷いた白熊の毛皮、床の絨毯の赤い桜の花、
色彩効果は素晴らしいと述べています。
床の絨毯には疑問があると述べ
絨毯に描かれた桜の木の根につまずく錯覚を覚えるからと。

収録されている文章は新聞紙上に書いた記事、雑誌、機関紙などへの
文章でとても解りやすいです。
ロース自身の編集による小冊子
「他のもの。西欧文化をオーストリアに移入するための小冊子」
という個人誌の記事もあります。
この小冊子はペーター・アルテンベルクが編集していた
半月刊雑誌「芸術」の附録として発行、発売されましたが二号でおわったそうです。
オーストリアは西欧の国であるのに何故
西欧文化をオーストリアに移入する必要があるのかという点は
当時先進国の都市化が進んだ他の西欧の国々(イギリス、アメリカも含め)
と比較し、ロースの眼には周縁に位置するオーストリアは
文化の面で後進国と映ったからであるらしいです。

この当時のウィーンってこんな感じだったのね。と
心を踊らせるのも良いですし
建築論として知識を得るのにも良いです。
ベートーヴェンについてやシェーンベルク、ココシュカとの厚い友情
を語る文章を読みロース氏の人物像を探ることもできます。

ロース氏が設計した住宅外観、住宅内部の写真や
バーやカフェの写真も掲載されています。
表題になっている「装飾と犯罪」はフランスの雑誌に初めに
掲載され、ドイツの新聞に載りその後これをもとに
ウィーン、ミュンヘン、ベルリンなど各都市において講演されたものです。
ロース氏が、意図する効果が最大限に発揮できるよう緻密に計算された
表題と文章で、「装飾と犯罪」という表題は一度聞くと誰もが
装飾と犯罪と小声で反復したくらい効果的に話題となったらしいです。



本の友 オスカー・ムーアwithカール・パーキンス - 2012.04.25 Wed

音楽を聴きながら

読書の時間を過ごす。

この中の曲でオススメは

「キス・ミー・アゲイン」。

ちからが入っていない

なにげなさが良いです。

気分がほぐれて、綿のようにフワフワになるかも。






「コーネルの箱」 チャールズ・シミック  文藝春秋 - 2012.04.23 Mon



表紙の作品は「忘れられぬ面影(ルシル・グラーンの外交:星グランド・ホテル)」

コーネルが愛した詩人マラルメは「無限は君が否定した偶然から現れ出る」と記す

コーネル本人が書いた日記には、「妄執に形を与えようとする懸命の企て」と記す

シミックはこのコーネルが愛した詩人の言葉と
コーネルの書いた日記の言葉を心に留め
シミックはコーネルを理解したかった、
そして自分にできたのはオマージュを構成することだったと語っています。

オススメの本を50音順に並べてみました。 - 2012.04.21 Sat

ブログを拝読させて頂いている方から教えて頂き
本のタイトルを50音順に揃えて紹介。(教えて頂きありがとうございます。)
自宅の本棚の前でどれが良いかしらと選ぶ時間が楽しかったです。

小説以外の中から選んでみました。選んだのはエッセイ、哲学、歴史、実用書などです。
コメントもほんの少し書き添えました。購入したきっかけなど。

A.R.Iのお菓子の提案Deiryマフィンとビスケット森岡 梨(モリオカ・アリ) サーモンクリームチーズもあり
イタリア的カテゴリー ジョルジョ・アガンペン装丁がカッコ良いイタリア人らしき人が手にしていたのを目撃
ウィトゲンシュタイン入門  永井 均     ウィトゲンシュタインに興味があったので。 
英国式15分家事術     15分という時間に惹かれました。       
オスカーワイルド長くて、美しい自殺メリッサ・ノックス著 サロメを読み著者自身を知りたくて。
上高地 奥飛騨温泉郷 タビリエシリーズは使われている紙の質感が好みです。
京都読書さんぽ  京都への旅に出る時に、読書、さんぽと好きな言葉がタイトルにあるので。
暮らしの哲学 やったら楽しい101題ロジェ=ポル・ドロワ著内容が楽しいです。     
見仏記     いとうせいこう みうらじゅん 文章とイラストのハーモニーが好き。
コーネルの箱  チャールズ・シミック著 柴田元幸訳 コーネルの作品と著者の文が静謐。
坂口安吾エッセイ選日本文化私観  堕落論読後に購入。
写真と古道具のくらし 古道具を使って写真を素敵に。刺しゅう糸や安全ピンで可愛いアコーディオンブック
スイス鉄道の旅  地球の歩き方の鉄道版 掲載されてる写真がとっても綺麗です   
青春の終焉   三浦 雅士 日本文学の歴史を知りたくて。著者が1970年代ユリイカ、現代思想の編集長
装飾と犯罪   アドルフ・ロース  以前読んだ書籍に関連してロースが出てきたので。
探求Ⅰ     柄谷行人  哲学書ばかり読んでいた時期に。
小さなものの諸形態   市村弘正  本の中で紹介されたのを見て。
つまみぐい文学食堂   柴田元幸  柴田氏が海外文学の中の食べ物を紹介。楽しいです。
(探索中) 
東京に暮らす1928ー1936 イギリスの外交官の妻の著者のエッセイ
夏目漱石      江藤 淳  夏目漱石の小説を熱心に読んでいたので。
日本文学史序説(下) 加藤周一  こちらも日本文学の歴史を知るために。
(探索中)
猫  井伏鱒二 クラフト・エヴィング商會のデザインの本はオシャレ。作家の猫への愛が感じられる
能楽への招待    梅若楢彦  能楽は良いです。
幕末史       半藤一利  幕末の歴史がわかりやすく書かれているので。
コー―の基礎知識 アレンジコーヒーの作り方、道具の紹介、お取り寄せビーンズショップガイド掲載
藤田嗣治「異邦人」の生涯    新聞の書評欄を見て。
(探索中)
本は読めないものだから心配するな 管 啓次郎  タイトルが気になり。帯に読書の実用論とあります。
また逢いましょう   瀬戸内寂聴、 永平寺貫首だった宮崎奕保 おふたりの対談があります。
道の手帖西田幾太郎   この哲学者の本を読んでいた時期に。 
(探索中)
文字の刺繍 小田原真喜子 カリグラフィーの文字の刺繍アーティフィンシャルアンシャル体とかあります。
やわらかなレタス 江國香織   この作家の文章の空気感が好き。
ユルスナールの靴 須賀敦子 <きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ>
ヨーロッパの乳房  澁澤龍彦   ヨーロッパの紀行文を読みたくて。    
ラテンアメリカ十代小説  木村榮一  ボルヘス、ガルシア=マルケスなどの作家の翻訳者による作品案内。
デパ地下&デおかず おしゃれなお惣菜デリのレシピ 写真がとっても綺麗です。
ルノワール  光と色彩の画家 賀川恭子 芸術は大好きです。
(探索中)
チェコスバキアめぐりカレル・チャペック旅行記コレクションオランダのも読むプラハとフェルメールのため
若い読者のための短篇小説案内  村上春樹 この本の中で案内されている小説の本をほとんど買いました。
幸せのお茶時間探しにロンドンのアフタヌーンティ『旅』新潮社雑誌の特集 もう出版されていないのが残念
陰影論 デザインの背後について 戸田ツトム 装丁論を読みたくて。

ご覧頂きありがとうございます。どうしても無い本は含まれている文字で…スミマセン
実用書も活用目的でなくても写真や文を読むだけでも楽しめる本です(*^_^*)

本の友 - 2012.04.15 Sun



本を読む時に愛用している文房具があります。

この付箋は最近使いはじめたのですが
片手で付箋を一枚取り出し
貼れるので電車の中で立って
読んでいるときにも便利です。
柄や色も可愛いので(*^_^*)。

メーカーのカンミ堂さんのオススメ文です。
ココフセンは、スリムなケースにふせんがセットされていて、
ケースの裏面には粘着シールが付いています。
たっぷり30枚入っていますが、中にセットされているのはフィルム製のふせんだから、
仕上がりはとてもコンパクト。
ふせんを一枚取り出すと次の一枚が出てくるケースになっているので、
取り出しがとてもスムーズです。

ケースの裏面の粘着テープは取り外した跡もつかないので
本の表紙の裏に直接貼っても大丈夫です。
本に直接ケースごと貼っておけるのも気にいってます(^^)/

「燃えつきた地図」 安部公房 著  新潮文庫 - 2012.04.14 Sat

まさしく読む地図。
探偵の「ぼく」が依頼された女性の家の中の地図まで読めます。
地図を広げると匂いも漂い風も吹き温度もある。
そしていつのまにか映像まで。
迷いたくても迷ったふりしかできないのです。


恋するための文学 (Petite bibliotheque classique # 2) - 2012.04.14 Sat

太宰治、岡本かの子、芥川龍之介、坂口安吾、岸田國士、国木田独歩
、横光利一、竹久夢二、林芙美子があなたの恋を全力で応援!?
一筋縄では行かない恋にも対応。9人の作家の「恋」を主題にした アンソロジー。

もし女性がこの作家の方々に恋の相談をしたら、
女性の作家のおふたりに相談した場合、恋のヒロインがいつのまにか
自分ではなく女性の作家の方々にかわってしまっていたり、
男性の作家の方々に相談した時は、
夢にまで見た白馬の王子様が玄関先まで来ているのに
言葉の魔法にかかり話し込んで気付かないかもしれません。


駆け込み訴え   太宰治
愛よ愛      岡本かの子
恋愛と夫婦愛とを混同しては不可ぬ  芥川龍之介
私は海をだきしめていたい      坂口安吾

恋を恋する人   国木田独歩
海の誘惑     岸田國士
春は馬車に乗って 横光利一 
ある眼      竹久夢二
恋愛の微醺    林芙美子


の作品タイトルです。
数々の恋愛遍歴や波乱万丈の生き方が
反映されているであろう恋に関する作品
でありますので、短篇ですが中身は濃縮されています。
自分の中に天使と悪魔を見てしまうこと、
小悪魔な女になる技術、
自分の幻想の中での恋。

肉慾すらも孤独でありうる人の魂は永遠に孤独であると
坂口氏は言い
芥川氏は恋の陶酔は一瞬であるので
ホリデーラブ一週間に一度の恋愛を主張する。


これらの作品を読むと
人の弱さ愚かさ純粋さをみつめ
人生は幻滅の連続などと言っていますが
それでも恋はするに値し、
相手があって恋はするものでありますが
自分の恋や人生までも自分自身で彩り
自分の中で物語として作る方法を持っていれば
どんな恋も人生も素敵になるということが
伝わってきます。

「入門経済思想史 世俗の思想家たち」ロバート・L.ハイルブローナー著 - 2012.04.14 Sat

「国富論」の著者アダム・スミス氏はぼんやり教授だった?人物像と共に経済学者たちの思想がどのように次の時代にリレーされたのか連作短編集のごとくドラマティックに描かれています。
経済学と見るだけで、頭の中の思考の道路が通行止めになり
迂回路もなくUターンするわたしが
書店でそのタイトルに惹かれるままに購入しました。

そして帰りの電車の中でさっそく読み始めると
序文のページで著者がタイトルを決める時に
「経済学」いう言葉を使ったのでは
本の売れ行きが悪いことを知っていたので
別の言葉を見つけるのに
知恵をしぼったとありました。
わたしがこの本に惹かれた理由がわかったのです。
「思想」という言葉にはなぜだか胸がときめくのです。
タイトルにこだわったように内容にもこだわりが感じられ
渋滞もなくスムーズに、たまにはパーキングによって
ソフトクリームを食べながらなんて雰囲気で愉しく
経済学の思想をめぐるドライブを満喫しました。

まず最初にアダム・スミスが取り上げられています。
1760年代にイギリスを旅した人は、
おそらくグラスゴー大学のアダム・スミスという人物のことを
耳にしたことだろう。スミス博士は有名ではないにしても、
よく知られた人物だった。ヴォルテールは彼のことを
伝え聞いていたし、デーヴィット・ヒュームは彼の親友だった。
彼のぎこちないが熱心な講義を聞くため、はるばるロシアから
旅してきた学生もいた。学問的な業績で有名なだけでなく、
スミス博士は一風変わった人物としても知られていた。
たとえば、彼の放心癖は有名だった。
あるとき、友人と熱心に議論しながら歩いていて革なめし用の穴に
落ちたことがあった。また、パンとバターで自己流の飲み物を作ったが
これはいままで飲んだなかで一番まずいお茶だと述べたとのことである。

エピソードも盛り込まれ、幼少期のことや
どんな学生であったのかも語られています。
1751年、まだ28歳にもなっていなかったスミスが
グラスゴー大学の教授になってから、どんな人物に出会い語り合い
どのような生活のなかで「国富論」を12年もの歳月を要して
書き上げたかについて語られています。
そのうえで、「国富論」とはどんな書物なのかと述べられているので
スミス博士がぐっと身近に感じられた後なので、とても理解しやすいです。

「もし、大英帝国のどの領土にせよ、帝国全体を
支えるために貢献させられないというのなら、いまこそ大ブリテンは、
戦時にこれらの領土を防衛する経費、平時にその政治的、軍事的施設を維持する
経費からみずからを解放し、未来への展望と構図とを、
その国情の真にあるべき中庸に合致させるよう努めるべき秋なのである」

の「国富論」の記述を引用し、著者のハイルブローナーは
アダム・スミスほど完全に、自分の時代を取り込んだ経済学者は、
二度と現れないかもしれない。確かにこれほど落ち着いた、
これほど権威を重んずる、これほど憎悪とは無縁な鋭い批判力をもつ、
そしてこれほど空想的ではなく楽観的な者はだれもいなかったと
語っています。
スミスは1790年に没し、キャノンゲートの教会墓地に埋められ
その控え目な墓碑には、「『国富論』の著者、アダム・スミスここに眠る」
と記されているとあり、これ以上に永続性のある記念碑を思いつくことは困難であろう。
と著者は語り、「アダム・スミスのすばらしい世界」の章は終わります。
そして「マルサスとリカードの陰鬱な予感」と題した次の章に続くのです。
アダム・スミスにとっては社会は、一つの大きな家族だったが、
リカードにとっては社会は内部分裂したキャンプだったと述べられ
「国富論」以後のイギリスの時代でうまれた経済学の思想について語られます。
時代を追いながら前の章で紹介された経済学者にどんな影響を受け
その思想に至ったかということがわかり、思想の変化がわかりやすいです。
社会主義者たちの夢やマルクスが描きだした体制
ヴィクトリア期の経済学の異端、ヴェブレンの描く野蛮な世界
ケインズの打ち出した異論、シュンペーターのヴィジョンと
歴史を形成する思想を巡る旅は続きます。

こうして一冊の本の中で経済学者たちを読むことが出来る事で
この本に名を連ねた経済学者たちそれぞれが
ロマンを持って世の中を自分のテーマとして描き
自分の時代にその思想が受け入れられず挫折しても
次の時代に続く経済学者が共鳴しまたは反論して
次世代にその思想がどのように受けつがれ変化していったのか
感じる事ができます。

1953年の大学院在学中にこの本を書いた著者ハイルブローナー
が道案内の思想の旅は著者がお勧めする経済学書の
読書案内も掲載されています。

春になると聴きたくなる曲 - 2012.04.10 Tue

4月になり春の風が心地良く頬をなでる季節に
なりました。

春になると聴きたくなる曲を紹介します。


「春風」 くるり  歌詞のなかのシロツメクサで編んだネックレスと
          いうところがなんとも素敵。


「ギブス」椎名林檎 また4月が来たよ。同じ日のことを思いだして~
          の歌詞。


「若葉の頃や」 キリンジ タイトルに若葉。メロディも優しい曲です。
             

















尾崎翠 (ちくま日本文学 4) - 2012.04.05 Thu

コケという生物の恋愛からおたまじゃくしの片恋まで宇宙に遍在する全ての恋を描いています。
昭和初期に書かれた作品が集められていますが古びることなく
時間の途中経過を抜けて昨日書かれた作品のように思えるほど。

なんて爽やかなんでしょう。

こんな爽やかな風がこころに吹くのなら

恋の苦しみもトライアングルな関係も

怖くないと想えてくるではないか。 

などと自分自身も書評を詩でうたいたく
なってくるほどのリズム感とピュアさで
綴られる「僕」が語る恋のおはなし
タイトル「地下室アントンの一夜」。

ひとは恋をすると詩人になるというが
わたしはこの作品の数々に恋をしたようです。

「こおろぎ嬢」「地下室アントンの一夜」「歩行」
「第七官界彷徨」
「山村氏の鼻」「詩人の靴」「新嫉妬価値」「途上にて」
「アップルパイの午後」
「花束」「初恋」
「無風帯から」「杖と帽子の偏執者」「匂い」「捧ぐる言葉」
詩「神々に捧ぐる詩」
タイトルだけでも恋に落ちそうです。
これらの作品を読むと失恋しても
その想いが消えずにその恋する気持ちが
永遠に続くと想う気持ちにとらわれます。
「地下室アントンの一夜」という作品で、
土田九作こと詩人の「僕」が「天上、地上、地下について」
という詩稿にて
恋する「僕」を地上におけるだけの事象ではなく、
天上、地上、地下という
宇宙とも地下ともつながる
自然の1部であると「僕」をとらえているからでしょうか。

失恋をすると自分の悲しみが世界の大部分を占め
そこに自然、宇宙が付属しているような
ちいさな気持ちになりがちですが、この作品は軽やかなのです。
心に爽やかな風が吹き抜けるのです。

「僕」は小野町子に恋をした。
ただ、僕は、町子のいなくなった部屋で、
いつまでも町子の置いて行った一罎のおたまじゃくしを
眺めていました。小さい動物をいつまでも眺めるのは、
人間が恋をはじめた兆候です。秋のおたまじゃくしは、
罎の壁を通して、黒ごまみたいに縮んでみえたり、
黒い卓子匙(テーブルスプーン)ほどに伸びて見えたりしました。
そして、縮んだおたまじゃくしも、伸びた分も、
一匹残らず片恋をしていました。

と「僕」は語ります。
また、「地上苦ければ地下に愉しき夢を追う」と
僕は心の中ですばらしい地下室、
うんと爽やかな音の扉を持った地下室を求めます。
アントン・チェホフという医者は、どこかの国の黄昏期に
住んでいて、しかし、いつも微笑していたと僕の地下室の扉は、
その医者の表情に似ていてほしいと思います。
そしてロシアの劇作家チェーホフ
に想いをはせ地下室アントンと名づけます。

恋とは、一本の大きい昆虫針で針は
僕をたたみに張っつけてしまい「僕」の部屋は
まるで標本箱だといいます。
僕の室内では、一枚の日よけ風呂敷も、
なお一脈のスピリットを持っている。


恋の気持ちを風呂敷や昆虫針という言葉を使い
美しく語るのです。

解説は矢川澄子さんが「二人の翠をめぐって」
というタイトルで書かれているものが載っていて
こちらも魅力があります。

東京堂書店 - 2012.04.03 Tue

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リニューアルオープンの神田神保町にある
東京堂書店に3月31日に行ってきました。
着いたのは閉店1時間前だったので、
お客さんも少なく落ち着いた雰囲気の中
店内をみられました。

わたしはリニューアル前の東京堂書店には
残念ながら訪れたことがないので、
どのようにかわったのかは、わかりませんが
1階から3階まである店内の
各フロアのスペースはそんなに広くないのですが
tomoe.jpg

1階は主に文庫、新書、新刊、フェア(今は月曜社のフェア)
2階は主にビジネス、語学、建築、コンピューター、理工、芸術
3階は主に文学、人文、歴史、地方小出版、リトルプレス、東京堂出版
棚の幅がちょうどよい長さで真ん中に立つと端から端まで
見渡せる感じが好みでした。
棚の色が芸術書のところだけ変えて白に近い灰色を使っていて
大理石の様に石を感じさせる風合いで白黒の写真集が映える
棚の感じで素敵でした。
各フロアでフェアの棚があり、経済書の棚の名著に関する書籍のフェア
のところにあった本がどれも欲しくなる興味深いものでした。
3階ではフェアとして早川書房の在庫僅少本の棚がありました。
世界文学の全集の棚も欲しい本がたくさん見つかったのですが
私のお財布の予算の関係でじっと熱いまなざしで見るだけでした。(笑)
魅力的な本にたくさん出会えてまた行きたいというか
できることなら隣に住みたくなるくらいでした(*^_^*)

「美しさと哀しみと」 川端康成 著  中公文庫 - 2012.04.02 Mon

作家の大木年雄、日本画家上野音子、その若い女弟子坂見けい子の
京都を主な舞台にした長篇小説。
女性の美しさと哀しみの綾を堪能できます。
時に激しい感情とともに官能的に。
日本画家の加山又造氏の挿画があります。


明治32年生まれの川端氏が
昭和36年1月から38年10月にかけて
雑誌に連載していた作品です。

作家の大木は31歳の時妻子がありながら
16歳の女学生の音子と結ばれます。
音子は大木と別れその心の傷から
精神を病んでしまいます。
そして、母と一緒に心の傷を癒すために
京都へ移り住みます。

年月は流れ24年後、自宅の北鎌倉から
大木は京都へ除夜の鐘を聞きに
暮れの29日に東海道線、特別急行列車「はと」の
展望車に乗っている。その場面から物語は
はじまっています。


けい子はかたい顏で海を見ていた。
「濃い濃霧になって来ますわ、近くの島や半島もかすんで…。」
「かなしいの?」
「波の色もいやだわ。」


美少女の女弟子けい子が大木を誘惑してホテルでの会話。
「かなしいの?」と男性がこたえる。
女性の美しさが際立ちます。
川端氏はもし自分が女性なら、この様な会話を
したいと思い、この場面を描いたのでは。
川端氏の中に女性的な部分があることで、
女性の美しさを描けるのだろうと思います。

東海道の沿線には、山もあり、海もあり、湖もあり、
時間によって雲も感傷に色染まるのに、あまり目立たない茶畑などが
なぜ音子の心に訴えたのかわからないけれども、茶畑の沈鬱のみどり、
夕暮れの茶畑のうねの沈鬱の陰が、音子にしみたのかもしれなかった。
それに茶畑は自然でなく、人工的に小さくて、うねの陰は深くて濃い。
また茶の木の円い群れは、おとなしい羊の青い群れと見えたが、
東京を立つ前から哀しい音子は、静岡あたりまで来てその哀しみが
極まったのかもしれなかった。



音子が大木年雄との愛にやぶれて、
母とともに京都へ逃避することになって汽車の窓から見た
静岡あたりの茶畑を見て哀しむ場面です。
日本の山河あっての哀しみの表現があります。
茶畑を見て哀しみの感情が
東京からの時間の経過とともに極まる。
女性の哀しみに共感していて美しくて…

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