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『西田幾太郎』 シリーズ哲学のエッセンス 永井均 著 NHK出版 - 2012.08.16 Thu

新宿の紀伊国屋書店にて
「ほんのまくら」というコーナーを
特設しているようです。
本の出だしの文章=「まくら」にこだわり、特集しているとのこと。
自分の「まくら」に対する感覚で本を選ぶのって楽しいかもしれない
ということではじめたそうです。
本の書き出しの文章が書いてある
オリジナルのカバーをかけてタイトルは見えないようにしてあるとのこと。
本の出だしの文章との出会いだけで本を選んでみる楽しさを味わえるようです♪

川端康成の『雪国』のはじまりの文

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

サイデンステッカーによる英訳では、この箇所は

The train came out of the long tunnel into the snow country.

と訳されている。
これをそのまま訳せば
「列車は長いトンネルを抜けて雪国に入った」
となる。
英訳では主語が明示されている。
一方
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」
という文には主語がない。
いったい何が、あるいは誰が、長いトンネルを抜けたのか、
肝心のそのことが描かれていない。
だから、この文章はそのまま英訳に訳すことはできないようだ。

しかし、ふだん日本語を使っているわたしたちは
川端康成のこの文を難なく理解するだろう。

でも、いったい何が、あるいは誰が、抜けるのか
列車?
たしかに事実はそうだが、
そう表現してしまったのでは、
この文が言わんとしているポイントは失われてしまう。

主人公の島村?
しかし、これもまた事実を正しく表現してはいるが、
川端康成の原文の言いたいこととは違っている。

主人公自身が自分を指す言葉「私」
「私が国境の長いトンネルを抜けると.....」は
「島村が国境の長いトンネルを抜けると.....」と
実質的に違いはない。
前者は、たまたま島村自身の口から発せられたために
変形した後者にすぎないからだ。

もし強いて「私」という語を使うなら、
国境の長いトンネルを抜けると雪国であったという、
そのことそれ自体が「私」なのである。
だから、その経験をする主体は存在しない。
西田幾太郎の用語を使うなら、
これは主体と客体が分かれる以前の
「純粋経験」の描写である。

もし雷鳴が聞こえたら、
日本語ではふつう「雷鳴が聞こえる」と言って、
「私は雷鳴を聞く」などとは言わない。
西田幾太郎の考え方では、
あえて「私」ということを言うなら、
そのときそのように聞こえている雷鳴、
そのように見えている稲妻が、
そのまま、
私なのである。

自分に雷の音が聞こえたとき
「私は雷鳴を聞く」と言ったり、
列車から海が見えたときに
「私は海を見る」と言ったりすれば、
わざわざ他者を排除して、
自分(だけ?)がそういう知覚を持っているように聞こえる。

西田哲学においては、
したがって西田哲学的に解釈された
日本語においては、
知覚する主体もまた、
究極的には存在しない。
雷鳴が聞こえているということ、
海が見えているということが、
存在するだけである。

あえて「私」と言うなら、
私が雷鳴を聞き
私が海を見るのではなく、
雷鳴が聞こえ、
海を見えていること自体が、
すなわち私なのである。


はじまりの文は素敵なものが
多いですよね。
「ほんのまくら」
とっても気になるので
期間中に出掛けてみようと思います。




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