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縞物の美学 - 2012.08.27 Mon




没落しかかった芸者置屋に
女中として住みこんだ主人公は
花柳界の風習や芸者たちの生態を
台所の裏側から観察し、
華やかな生活の裏に流れる
哀しさやはかなさ、
浮き沈みの激しさを
描いている。

この本は幸田文の本を読みたいと思い
選んでいた時に
この表紙の「縞」に惹かれて選んだ。


「縞物」は室町時代から江戸時代を通じて珍重され、
中国・明の船や南蛮船で運ばれてきた渡来の織物だった
と以前に読んだ『装飾する魂』に書いてあった。
「縞」とは「島」、
つまり島渡り(舶載品)のことで、
中世日本では「筋」や「隔子」と呼ばれていた
平行線や格子の文様が、
そのときから新しい名を得たのである、とのこと。

平安貴族は縞柄を好まなかったから、
有職織物に縞はほとんど登場しない。
室町時代に明から「間道」が
桃山時代にインドや南方諸国から「唐桟」が
もたらされたとき
それらのシンプルで美しい経縞柄(たてしまがら)は
まさに日本人にとって刺激的な文様であったらしい。
それまでの日本には定着していなかった
木綿という素材の優しい肌触りとカラフルな色。
エキゾティシズムをそそるたくさんの要素が
「縞」に織り込まれていたのである。

その縞柄の美しさにまっ先に目をつけ、
名物裂として茶入れの仕覆などに珍重した
茶人たちがいればこそ、
縞が世で普遍的な価値をもつことになった、とのこと。
その単純明快な線の抽象が侘数寄の美学に合致した。
装飾過多な貴族的意匠の伝統を引きずってきた
日本の飾りの美学のなかに、
初めて立ち現れた簡潔な「縞」は
豪華絢爛の名物揃いの茶を味わい尽くした果てに達する、
無一物の境地(『南方録』)と引き合ったかもしれないと。

この「縞物の美学」は、
江戸になり裾野が広がって
町人文化の「いき」に育っていった。
「光ある物」に届かない庶民、
心意気だけが生命の町民は、
彼らの意気地を映し出す
表象にしたのだった。

意気/意気地とは、
他者とくに異性に対して媚態をみせつつもなお
「一種の反抗を示す強みをもった意識」なのだ。
と、九鬼周造は『「いき」の構造』で説明している。
「縞」は「いき」を表す最高の芸術(造形)表現であると。

「永遠に動きつつ永遠に交わらざる平行線」
一方の線と他方の線との間に生じる距離の緊張。
からだの線を出して、縞を着た女性が、
しなをつくる。
そのとき着物の縞がはんなりと曲がる。
女性の「いき」を縞は目の前にあざやかに視覚化していると。


幸田文の『流れる』は「いきな女性」の話しであるとも
いえるのかもしれない。



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