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『川端康成・三島由紀夫往復書簡』  新潮文庫 - 2012.06.30 Sat

お気に入りの書店がいくつかあります。
その中のひとつの書店は、こぢんまりとして静かで、
大型書店にはない居心地の良さがあります。
その書店の文庫の棚には限られた空間のなかに厳選された文庫が置かれ
いつも私のことを上手く誘惑してくるのです。
そして誘惑されるがままにレジへと私は行くのでした。
その魅惑の本は家に持ち帰っても魅力は半減せず必ず読んでしまうのです。
そんな本のなかの一冊。
『川端康成・三島由紀夫往復書簡』です。

川端康成   (明治32年-昭和47年)
三島由紀夫  (昭和22年-昭和45年)

三島由紀夫が二十歳、文壇デビュー以前の頃から
昭和45年、自決の4カ月前に出された永訣の手紙で
終止符を打つまでのものが公開されています。
そして川端康成の返信の手紙。

表紙をめくるとまず目にするのは、写真です。
昭和43年ノーベル文学賞決定の翌日、川端邸にて
ふたりで縁側に座り、三島由紀夫がタバコを手にし、
和服姿の川端康成が、同じものを見つめているように
庭の方を向いています。

昭和20年3月8日川端康成が書いた手紙で、
三島由紀夫が東大在学中に川端康成に送った
処女小説集『花ざかりの森』に対する礼状の手紙から
二人の親交は始まっています。
三島由紀夫は手紙を書くのが好きだったらしく、
筆まめで、義理堅いところがあったらしい。
便箋3枚ぐらいにわたって書かれている印象。
川端康成の返信はさらっと1枚。でも好意的。

師弟関係が深まっていく様子、「仮面の告白」の構想、
ふたりの手紙の書かれていないところに何が含まれているのかを推測する楽しみ、
また、川端康成が自分の飲んでいた眠り薬についてのことや、
御母様づれの石原慎太郎さんと横須賀線に乗合わせたことなどを書いていたり
三島由紀夫が「一貫目以上の猫が小生の膝の上に眠ってをり、バーベルのような重さです。」
と書いていたり、産まれたばかりの長女のことなども書いていたりして、
手紙ならではの日常のひとこまを垣間みることができ、
このふたりの作家が好きなわたしとしては、濃密な読書時間となりました。

巻末の方には「恐るべき計画家・三島由紀夫 魂の対話を読み解く」と題して
佐伯彰一氏と川端香男里氏の対談が掲載されています。
佐伯彰一氏は『三島全集』の編集をされた方で、三島由紀夫と交流があり、
川端香男里氏はロシア文学の学者で川端康成の養女政子さんと結婚された方。
手紙が書かれた当時の背景や手紙から察することが出来る心模様などを
解説のごとく対談されています。
川端康成がノーベル賞受賞以降に三島由紀夫が出した手紙は二通だけ。
そのことについての対談の部分が読み応えがあります。

三島由紀夫が「1961年度ノーベル文学賞に川端康成氏を推薦する」という
スウェーデン王立アカデミーへの推薦文を書いていて
その英文全文と佐伯彰一氏の訳文も載っています。





川端康成はノーベル文学賞受賞記念講演の『美しい日本の私』で、
一休和尚の言葉と伝えられる「仏界入り易く、魔界入り難し」という言葉を紹介し、
「魔」の世界の魅力について熱っぽく語った。
川端康成は作品の中で女たちが秘めている「魔」を執拗にあぶり出し、
自分の心の中に吸収した「女の魔」を味わい、楽しむ。
そして、自分と「魔の女」が永遠に結ばれないことで、美しい緊張感を発生させる。
それが、生きづらいこの世を生きるエネルギーとなる。

そして見事な魔翁となった川端康成の頭上にノーベル文学賞は輝いた。
そのとき、奇跡がおきて自分と「魔の女」の間にあった垣根を越えてしまった。
不可能と同じ意味であったノーベル文学賞を手にした川端康成。
垣根を越えてしまい女の「魔」も急速に薄れ、
川端康成が「魔の女」から生命力を授かる時代は過ぎ、
読者が「魔の女を描いた川端康成」から生命力をもらう一方になった。
川端康成は女たちから「魔」のエネルギーを引き出せなくなった。
そして川端康成のノーベル賞受賞決定の夜、
渾身の悔しさを隠して祝福の言葉を述べたであろう三島由紀夫。
この夜を境として、三島の運命が暗転した可能性は否定できない。

以前に読んだ本でそのような記述がありました。

『川端康成・三島由紀夫往復書簡』の巻末に対比するかたちで
ふたりの略年表が掲載され、それを見るとお互いに影響しあった
人生であったのだなあと感慨深いものがあります。

もしかして三島由紀夫はノーベル文学賞を取れなかった悔しさもあるが
ノーベル文学賞という魔の女に川端康成を奪われたことに落胆し、
そして三島由紀夫のエネルギーを得られなくなった川端康成は
生命力を失っていった面もあるのかもなどと考えてしまいました。



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