2017-08

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『和辻哲郎随筆集』 短文を通して描かれる夏目漱石 - 2012.07.08 Sun

岩波文庫の『和辻哲郎随筆集』を読みました。
随筆とはどういうものをいうのでしょうか。
ふと国語辞典で調べてみたくなりました。
「特定の形式をもたず、見聞、経験、感想などを気の向くままに書き記した文章。エッセイ。」
と書かれてありました。やはりエッセイと同じようなものをさしているのでしょうか。

岩波文庫の表紙には、
和辻哲郎は第一級の随筆の書き手でもあった。
とあり、
和辻のエッセイは、彼の発想と思索の原点を端的に示して、
学問的著作理解のよき補いとなるだけでなく、
平明な文体で読書の楽しみを堪能させてくれる。
と書かれています。

でもこれは随筆でもなくエッセイとも違う
なにか心に強く訴えかけるものがあるように思いました。
そう思ったあとに解説を読んでみました。
「自分は大正12年関東大震災のおりに、
いささか感ずる所があって、
書かないで済むものは一切書くまいと決意した。
その決意は今もなお続いている。
原稿の依頼は大部分断り通してきた。
だから、その年以降の短文は何かしら書かないでは済まない理由があって書いたのである。」
と著者の和辻氏は述べているらしい。

「短文」といって、随筆とはいわない。
著者のある種の決意がこめれている。
けれども論文のような学問的著作とは違い分かり易く、
著者が感じたことを読んだわたしが、素直に受け取れるような文章でした。

「夏目先生の追憶」という題の
『新小説』1917年1月臨時号に掲載されたもの
がこの本にのっていました。
「夏目先生の人及び芸術」に関する特集。

夏目先生の大きい死にあってから今日は八日目である。
私の心は先生の追懐に充ちている。
しかし私の乱れた頭はただ一つの糸をも確かに手繰り出すことができない。
わたしは夜ふくるまでここに茫然と火鉢の火を見まもっていた。

という文ではじまります。

著者の和辻氏が夏目先生を高等学校の廊下で毎日のように見た頃の感情や
はじめて千駄木の先生の家に訪れ話しをした印象など、
著者が自己の確かでない感傷的な青年であった「私」の頃にもどった追憶で綴られていく。
そして、
自分が先生に抱いていた感情は
先生の方から生徒を見ればどうなるか。
ということに触れ、先生の手紙の一節が引かれている。

著者の和辻氏が夏目漱石の個性を本当に細かく受け取っていて
感傷的な青年の頃から接していたから受け取れるものであるのでしょう。
和辻氏の文を通してここまで夏目漱石を知ることができることに
読んだわたしは幸福であると思いました。

和辻氏は夏目漱石の作品に触れ、

我々は赤裸々な先生の心と向き合って立つことになる。
単なる人生の報告を聞くのではなく、
一人の求道者の人間知と内的経路との告白を聞くのである。と。
『猫』、『野分』、『虞美人草』、『心』、『道草』、『明暗』
『三四郎』『それから』『門』『彼岸過迄』『行人』、『硝子戸の中』
和辻氏は先生の人格に引きつけられている心持ちの中、
先生が「何を描こうとしたか」について触れている。

和辻氏は語る。
先生の技能が提供するさまざまの興味のある問題は、
たとえその興味が非常に深かろうとも、今直ちに私の心の中心へ来る事が出来ない。
しかしそのために読者諸君の注意をこの方向へ向けて悪いというわけは少しもない。
私は先生の死に際して諸君が先生の全著書を一まとめにして
あらためて鑑賞されんことを希望する。

先生の芸術はその結構から言えば建築である。
すべての細部は全体を統一する力に服属せしめられている。
さらにまた先生の全著書は先生の歩いた道の標柱である。
すべての作は中心をいのちに従って並べられている。

和辻氏が、
「田舎の事とてあたりは地の底に沈んでいくように静かである。
あ、はるかに法鼓の音が聞こえて来る。
あの海べの大きな寺でも信心深い人々がこの夜を徹しようとしているのだ。」

と書いている感情のなか描かれた夏目漱石に触れられます。
和辻氏が26歳の頃である。



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